遺伝学:黒死病と関連付けられた免疫遺伝子の進化
Nature 611, 7935 doi: 10.1038/s41586-022-05349-x
感染症は、ヒトの進化を駆動する最も強い選択圧の1つである。これには、有史時代における唯一最大の大量死事象で、一般に「黒死病」と呼ばれる、ペストの第二次パンデミックの最初のアウトブレイク(集団発生)が含まれる。ペストはペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる感染症であり、このパンデミックは、アフロ・ユーラシア大陸に壊滅的な被害をもたらし、人口の最大30~50%を死に至らしめた。今回我々は、黒死病の際に選択された可能性のある座位を特定するため、2つの異なるヨーロッパ人集団の、それぞれ黒死病の流行前、流行中、流行後に死亡した人々に由来する206例の古DNA抽出物から、免疫関連遺伝子の周辺の遺伝的変動の特徴を明らかにした。免疫座位は、一連の非免疫座位と比較して、高度に分化した部位に非常に豊富に存在することから、正の選択を受けたことが示唆される。ロンドンのデータセット内において高度に分化した245のバリアントが特定され、そのうち4つはデンマークの独立コホートでも再現されたことから、これらは正の選択を受けた最も有力な候補である。これらのバリアントの1つであるrs2549794の、選択を受けた対立遺伝子は、(短縮型に対して)完全長のERAP2転写産物の産生、ペスト菌に対するサイトカイン応答の変動、マクロファージでの細胞内ペスト菌を制御する能力の増強と関連付けられた。さらに我々は、防御バリアントが、自己免疫疾患に対する感受性の上昇と現在関連付けられている対立遺伝子群と重なることを示し、過去のパンデミックが現在の疾患感受性を形作る上で役割を果たしたことを示す経験的証拠を提示する。

