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免疫学:ヒトAPOEのありふれた遺伝的バリアントはマウスのCOVID-19の死亡率に影響する

Nature 611, 7935 doi: 10.1038/s41586-022-05344-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の臨床転帰は、非常に不均一で、無症候性感染から致死性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)まで幅広い。この不均一性の根底にある要因についての理解は不十分である。遺伝的関連解析の結果は、遺伝的バリアントがCOVID-19転帰の不均一性に関与することを示唆しているが、根底にある潜在的な原因機構は十分に理解されていない。今回我々は、アポリポタンパク質E(APOE)遺伝子の複数のありふれたバリアント(世界の人口の約3%でホモ接合性で、アルツハイマー病やアテローム性動脈硬化症、抗腫瘍免疫と関連付けられている)が、男性や高齢によってもたらされる感受性の増加を再現したマウスモデルにおいて、COVID-19の転帰に影響を及ぼすことを示す。APOE2APOE4のバリアントを有するマウスは、最も高頻度に存在するAPOE3対立遺伝子を有するマウスと比べて、急速な病気の進行や生存転帰の不良を示した。また、APOE2マウスとAPOE4マウスではウイルス量が増加し、感染後初期の適応免疫応答が抑制された。in vitroアッセイでは、APOE3と比べてAPOE2やAPOE4の存在下で感染の増加が見られ、これは、転帰の差異はAPOEバリアントがウイルス感染や抗ウイルス免疫の両者に及ぼす影響の差異によることを示している。マウスにおけるこれらのin vivoでの知見と一致して、我々の結果は、APOEの遺伝型が英国バイオバンクでのSARS-CoV-2感染患者の生存率と関連付けられることも示している(候補バリアント解析、P = 2.6 × 10−7)。今回の結果は、APOEの遺伝型がCOVID-19の転帰の不均一性を部分的に説明すること、そして、有害転帰リスクの高い患者を特定する手段としてAPOEのジェノタイピングを評価する前向き研究の妥当性を示唆している。

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