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免疫学:重症COVID-19でのナイーブB細胞の調節異常とde novo自己反応性

Nature 611, 7934 doi: 10.1038/s41586-022-05273-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による重症感染症は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)の当初から、炎症性の強い免疫活性化と関連付けられていた。より最近では、これらの反応は、病的な可能性のある自己反応性抗体の出現と関連付けられているが、そうした抗体の起源や解消法は分かっていない。以前、我々や他のグループは、慢性的な自己免疫における新たな自己反応性抗体の形成に関連する経路である濾胞外B細胞活性化が、重症や致死性のCOVID-19の主要な特徴であることを明らかにした。今回我々は、軽症患者と重症患者の単一細胞B細胞レパートリー解析を用いて、抗体分泌細胞(ASC)では、低選択圧の特徴を反映する、ナイーブB細胞由来の低変異IgG1集団が拡大していることを明らかにする。これらの特徴は、臨床に関連する進行性で広範な、とりわけ核抗原やカルバミル化タンパク質に対する自己反応性と相関しており、症状の発現から10〜15日後に出現してくる。選択圧の低い区画の詳細な解析によって、糸球体基底膜に対する病原的な自己抗体などの、SARS-CoV-2と自己抗原の両者に特異的なクロノタイプの頻度が高いことが示された。さらに、回復時にこの経路が縮小していることや、免疫寛容の基準が再構築されていること、同時に抗原特異性にかかわらず急性期由来のASCの消失を伴うことが分かった。しかし、血清学的な自己反応性は急性期後の後遺症を示す患者の一部で持続しており、これは、新たに生じる自己反応性の、回復時の継続的な症候への関与について重要な疑問を提起している。まとめると本研究は、重症COVID-19における自己反応性の起源や範囲、解消法を明らかにしており、COVIDの後遺症患者の早期介入や治療に意義を持つ。

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