創薬:抗うつ作用を持つ5-HT2A受容体アゴニストへのカスタムメイドライブラリーのドッキング
Nature 610, 7932 doi: 10.1038/s41586-022-05258-z
リガンドを見つけ出すために行う超大型化学ライブラリーのスクリーニングは、実験と計算の両方で大きな関心を集めている。だが、労力は容易に合成できる分子の方に注がれていて、その結果、多くの化学種が探索されないままとなっている。テトラヒドロピリジン類は、一般的な10億分子程度のバーチャルライブラリーではあまりサンプリングされていない骨格だが、多くのアミン作動性Gタンパク質共役受容体には非常に適している。今回我々は、テトラヒドロピリジン類のカスタムメイドバーチャルライブラリーの構造ベースのドッキングについて調べた。3つの入力データを用いて(それぞれに入手可能な多様な誘導体が含まれる)、ワンポットC–Hアルケニル化、電子環状化、還元から、最大で6つの誘導体化部位を持つテトラヒドロピリジンコアが得られた。モデルとしたセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2AR)への7500万個のテトラヒドロピリジンからなるバーチャルライブラリーのドッキングから得られた17個のスタート分子で、合成と検証が行われた。これらの分子のうちの4つは、5-HT2Aまたは5-HT2B受容体のどちらかに対して低いマイクロモル濃度で活性を示した。構造を基盤とした最適化により、5-HT2ARのアゴニストの(R)-69と(R)-70が得られ、それぞれの50%有効濃度値は41 nMと110 nMで、幻覚作用のある5-HT2ARアゴニストとは異なる、異例のシグナル伝達動態が見られた。クライオ電子顕微鏡構造解析により、5-HT2ARに対する予測された結合様式が確認された。これらの新規アゴニストは、その好ましい物理的特性によって脳への透過性は高く、マウスでの行動試験が可能となった。古典的な5-HT2ARアゴニストとは対照的に、これら2つには幻覚作用はなかったが、マウスモデルでは両方に強力な抗うつ作用があり、抗うつ薬フルオキセチンと比べると40分の1という低い投与量で、同程度の有効性が見られた。薬理学的に関連性のある化学空間をサンプリングするのにカスタムメイド仮想ライブラリーを使用することへの見通しは、今後さらに検討されるだろう。

