天文学:ステファンの五つ子に関連した0.6 Mpc規模の H I構造
Nature 610, 7932 doi: 10.1038/s41586-022-05206-x
ステファンの五つ子[SQ、NASA/IPAC銀河系外データベース(NED)によると共動半径距離は85 ± 6 Mpc]は、コンパクトな銀河群の中でも特異である。これまでの観測から、銀河群内物質へ現在衝突している高速の侵入銀河を含む複数の構成銀河の間の相互作用によって、おそらく潮汐デブリが複数のガス状や恒星状のフィラメントの形で生み出され、潮汐矮小銀河や銀河群内のスターバーストの形成され、広範囲に広がる銀河間衝撃波を受けたガスが生じたことが示されている。こうした相互作用や衝突の詳細とタイミングは、その複合的な特性のためにまだ十分に解明されていない。本論文では、SQの近傍における、1チャンネル当たり1σ = 4.2 × 1016 cm−2の平滑化した感度での、水素原子(H I)の観測結果(速度のビン幅Δv = 20 km s−1、角分解能= 4′)について報告する。この値は、これまでの観測結果より2桁ほど深い。得られたデータは、デブリ場に関連した約0.4 Mpcのサイズの広がった放射源と、この広がった放射源の南端に付随する約0.5 Mpcの長さの曲線状に拡散した特徴を含む、大きなH I構造(線形スケールで約0.6 Mpc)を示している。この拡散した特徴は、おそらくSQの形成の初期段階(10億年以上前)における潮汐相互作用によって生成されたが、低密度のH Iガス(NH I ≲ 1018 cm−2)がどのようにして、このような長い時間スケールで銀河間の紫外背景輻射による電離の下で存在し続けることができるかについては明らかになっていない。今回の観測結果は、銀河群の外側部分におけるガスの特性の再考を必要とし、銀河群形成のシミュレーションにおける銀河群内物質の異なる段階の複雑なモデル化を求めるものである。

