生物学的手法:ショウジョウバエ細胞におけるCRISPRスクリーニングからVsgがTc毒素受容体であることが特定される
Nature 610, 7931 doi: 10.1038/s41586-022-05250-7
昆虫病原性線虫は生物農薬として広く使用されている。それらの殺虫活性は、Photorhabdus luminescensなどの共生細菌が主な毒力因子として毒素複合体(Tc)毒素を産生することに依存している。いずれのTc毒素についてもタンパク質受容体は知られていないため、Tc毒素の特異性や病原性についての我々の理解は限られている。今回我々は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)S2R+細胞において、ゲノム規模のCRISPR–Cas9を用いたノックアウトスクリーニングを行い、Visgun(Vsg)が原型的なP. luminescens Tc毒素(pTc)の受容体であることを特定した。pTc毒素は、VsgのO-グリコシル化されたムチン様の細胞外ドメインを認識する。このドメインには、プロリン、トレオニン、セリンの高密度な反復配列(HD-PTS)が含まれている。蚊や甲虫のVsgオルソログにはHD-PTSが含まれていてpTc受容体として機能できるが、蛾やヒトなどのHD-PTSが存在しないオルソログはpTc受容体として機能しない。Vsgは、血球や脂肪体細胞などの免疫細胞で発現している。Vsgノックアウトショウジョウバエの血球は、pTcに抵抗性であり、pTcの存在下でファゴサイトーシスを維持しており、蚊のVsgをトランスジェニック発現させることでpTcに対する感受性が回復した。さらに、Vsgノックアウトショウジョウバエは、P. luminescens感染で細菌量の減少や致死率の低下を示した。我々の知見は、Tc毒素のタンパク質受容体を特定しており、Tc毒素がP. luminescensの病原性に関与する仕組みを明らかにするとともに、殺虫毒素と病原体を調べるためのゲノム規模のCRISPRスクリーニング手法を確立するものである。

