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構造生物学:方向性の決まったキチン生合成の構造基盤

Nature 610, 7931 doi: 10.1038/s41586-022-05244-5

自然界に最も多く存在するアミノ多糖であるキチンは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を単位とする細胞外ポリマーである。キチン生合成の重要な反応は、キチンシンターゼにより触媒される。この酵素は膜内在型グリコシルトランスフェラーゼで、伸長中のキチン鎖へUDP-GlcNAcからGlcNAcを転移する。しかし、この過程の正確な機構はいまだに明らかにされていない。今回我々は、大被害をもたらすダイズ茎疫病の病原菌である卵菌類Phytophthora sojae由来のキチンシンターゼ(PsChs1)の5つのクライオ電子顕微鏡構造、すなわちアポ状態、GlcNAcと結合した状態、新生キチンオリゴマーに結合した状態、UDPと結合した状態(合成後)、それにキチンシンターゼ阻害剤ニコマイシンZが結合した状態の構造を報告する。これらの構造から、キチン生合成の複数の段階と生合成の拮抗的阻害についての詳細な描像が明らかになった。構造からはまた、基質結合部位と触媒中心、それに生成したポリマーを放出するためのポリマー輸送チャネルへの入り口が含まれる、キチン生合成の反応区画が明らかになった。この配置は、UDP-GlcNAcの結合とポリマー伸長から生成物放出に至る、キチン生合成で連続して起こる重要な事象を反映している。我々は、キチン輸送チャネル中の揺れ動くループを明らかにした。このループは、生成したポリマーを細胞膜の細胞外側に放出するための輸送チャネルへと導く際に基質が解離するのを阻害する「錠前」として働いている。この研究によって、キチン生合成の方向性の決まった多段階型の機構が明らかになり、キチン合成阻害の構造基盤が提供された。

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