がん:コラーゲン切断に依存するDDR1シグナル伝達は膵臓がんの転帰に影響する
Nature 610, 7931 doi: 10.1038/s41586-022-05169-z
膵管腺がん(PDCA)は、繊維形成性の高いアグレッシブながんであり、進行性である場合が多く、肝臓への転移により広がる。がん関連繊維芽細胞、細胞外マトリックスおよびI型コラーゲン(Col I)は、PDACの進行を促進あるいは抑制し、血液の供給と栄養素の利用可能性を妨げる可能性がある。PDACの間質が果たす二面的な役割と、それが患者の生存に影響を及ぼし、繊維形成性のがんが栄養素の制限を回避できるようにする機構についてはほとんど分かっていない。今回我々は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)により切断されたCol I(cCol I)と無傷のCol I(iCol I)は、PDACの生体エネルギー論的性質、マクロピノサイトーシス、腫瘍増殖および転移に対して正反対の影響を及ぼすことを示す。cCol IはDDR1(discoidin domain receptor 1)–NF-κB–p62–NRF2シグナル伝達を活性化してPDACの増殖を促進するのに対して、iCol IはDDR1の分解を引き起こし、PDACの増殖を抑制する。腫瘍にiCol Iが多量に存在し、DDR1とNRF2の発現レベルが低い患者では、cCol I、DDR1、NRF2レベルの高い腫瘍の患者に比べて、より良い生存期間中央値が見られた。DDR1誘導性のNF-κB発現やミトコンドリアの生合成を阻害すると、野生型マウスでは腫瘍発生が抑制されたが、MMP抵抗性Col Iを発現させたマウスでは抑制が見られなかった。PDACの増殖と転移、また患者の生存に対する腫瘍間質の多様な影響は、Col I–DDR1–NF-κB–NRF2ミトコンドリア生合成経路を介しており、この経路の構成要素の標的化は治療機会をもたらす可能性がある。

