乳がん:転移性乳がん患者に対する治療法を選択するためのゲノミクス
Nature 610, 7931 doi: 10.1038/s41586-022-05068-3
がんの進行を促す原因の一部はゲノム変化である。がんのゲノム特性解析により、ドライバーの変化に関しては患者間で不均一であることが明らかにされたことで、がん患者でのゲノムプロファイリングの作成によって効果的な治療法の選択が可能になるという概念が生まれた。DNA塩基配列解読は実際に行われているが、その結果をどのように使用するのかは明確化されていない。今回、SAFIR02-BREAST試験において、HER2を過剰発現していない転移性乳がん患者が計1462人登録され、ゲノムプロファイリングが行われた。これらの患者のうち238人は、維持療法の有効性とゲノム変化にマッチさせた標的療法の有効性を比較する2つの試験(NCT02299999およびNCT03386162)に無作為に割り付けられた。ゲノミクスとマッチさせた標的療法は、ゲノム変化がESCAT(ESMO Scale for Clinical Actionability of Molecular Targets)に従ってレベルI/IIに分類される場合、無増悪生存期間を改善した[調整ハザード比(HR):0.41、90%信頼区間(CI):0.27–0.61、P < 0.001]が、ESCATを用いて選択されていない変化の場合では無増悪生存期間を改善しない(調整HR:0.77, 95% CI:0.56–1.06, P = 0.109)ことが分かった。ESCATレベルI/IIより上の変化を示す患者に対する標的療法では、無増悪生存期間の改善は見られなかった(未調整HR:1.15、95% CI:0.76–1.75)。BRCA1/2生殖細胞系列変異を持つ患者(gBRCA1およびgBRCA2;n = 49)では、オラパリブが高い有効性を示した(gBRCA1:HR = 0.36、90% CI:0.14–0.89;gBRCA2:HR = 0.37、90% CI:0.17–0.78)。この試験は、ゲノミクスから導かれた治療決定は、転移性乳がん患者における標的有用性の枠組みを用いて進めるべきである根拠を示している。

