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神経科学:状態依存的な瞳孔の散大が視覚特徴の選択性を急速に転換させる
Nature 610, 7930 doi: 10.1038/s41586-022-05270-3
演算の柔軟性を高めるため、感覚入力の処理は行動上の文脈に伴って変化する。視覚系では、運動活性や瞳孔の散大で特徴付けられる能動的行動状態によって感覚応答が増強されるが、ニューロンの最適刺激は通常変化しない。今回我々は、マウスの視覚皮質で、色彩のある自然風景の文脈において、行動状態が刺激の選択性も調整することを見いだした。行動中のマウスでの集団画像化、薬理学、深層ニューラルネットワークのモデル化を用いることで、能動的行動状態における、色選択性の紫外刺激方向への急速な転換が明らかになった。これは、状態依存的な瞳孔の散大のみにより引き起こされており、その結果、光受容が桿体細胞から錐体細胞へと切り替わり、それによって両受容器の役割が夜間と昼間の視覚の分担を超えて拡張される。こうした調整における変化は、例えば薄暮の空に舞う捕食者など、動物行動学的な刺激の解読を促進する。数十年にわたり、神経科学と認知科学の分野の研究では、瞳孔の散大は脳状態の間接的指標と見なされてきた。我々のデータは、これに加えて、状態依存的な瞳孔散大それ自体が、短い時間スケールで桿体細胞と錐体細胞を差別的に動員することにより、視覚表現を行動上の必要に応じて調整していることを示唆している。

