Article
構造生物学:細菌細胞内で起こる翻訳動態の原子レベルでの詳細を可視化する
Nature 610, 7930 doi: 10.1038/s41586-022-05255-2
翻訳はタンパク質合成の基本過程であり、全ての生細胞でリボソームが触媒している。今回我々は、クライオ電子線トモグラフィーとサブトモグラム解析の進歩に助けられて、細菌である肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の内部で起こる翻訳の際の構造の動的変化を可視化した。機能中の状態を詳細に説明するため、我々はまず、翻訳中のリボソーム全てについて細胞内で平均した高分解能マップを得て、肺炎マイコプラズマリボソームの原子モデルを作製した。このモデルから、複数のリボソームタンパク質に特徴的な伸びがあることが分かった。さらに我々は、リボソームの状態を、コンホメーションや構成に違いのある13種類に分類した。これらは、以前にin vitroで解明された主な状態を再現しており、活発に翻訳中の中間体を表している。我々は、これらの状態に基づいて、天然の細胞中で起こる翻訳の伸長段階を動画化し、抗生物質が細胞の翻訳の全体的な状況をどのように変化させるかを明らかにした。翻訳の伸長段階では、リボソームは決まった三次元配置で集合してポリソームを形成することが多い。翻訳中のリボソームの細胞内での組織化の様子をマッピングすることによって、リボソームからのポリソーム構築には、リボソームタンパク質L9を介した局所的な協調機構が関わっていることが明らかになった。ポリソーム内でのL9の伸びたコンホメーションが衝突を軽減して、翻訳の忠実度を高めていると、我々は考える。この研究によって、細胞内の分子過程を原子レベルの精度で可視化することの実現可能性が実証された。

