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進化遺伝学:アングロ・サクソン人の移住と初期のイングランド人遺伝子プールの形成

Nature 610, 7930 doi: 10.1038/s41586-022-05247-2

ブリテン諸島の歴史は、ローマ帝国支配の終焉後の重大な変化をはじめとする、文化を大きく変転させた複数の時代によって特徴付けられ、これが、言語、定住パターン、物質文化の移り変わりを促進した。そうした変遷に、大陸ヨーロッパからの移住がどの程度関与したかについては、長く議論が続いている。今回我々は、中世の北西ヨーロッパ人460人(うち278人はイングランド人)のゲノム規模の古DNAを考古学データと共に調べ、当時の人口動態を推測した。我々は、中世前期のイングランドでは、大陸の北ヨーロッパ人系統が大幅に増加していたことを見いだした。この系統は、中世前期および現代のドイツ人およびデンマーク人と近縁であり、これは、中世前期に北海を越えるブリテン島への大規模な移住があったことを示唆している。結果として、今回解析を行ったイングランド東部の人々は、顕著な地域差や遺跡内での不均一性はあるものの、その系統の最大76%が大陸の北海地域に由来していた。我々は、移民を祖先に持つ女性は、この地域に元から暮らす系統の女性よりも副葬品と共に埋葬されることが多かったのに対し、武器と共に埋葬された男性の割合は移民を祖先に持つ者以外でも同等であったことを示す。現代のブリテン島との比較からは、その後の人口動態学的事象によって、大陸の北ヨーロッパ人系統の割合が減少した一方、鉄器時代のフランスに見られた系統に最も近縁な南西ヨーロッパ人系統の大規模な寄与など、別の系統を構成する要素がイングランド人の遺伝子プールに導入されたことが示された。

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