Article

計算生物学:細胞状態遷移の制御

Nature 609, 7929 doi: 10.1038/s41586-022-05194-y

細胞状態の遷移を理解し、それらを意図的に制御することは、生物学における長年の課題である。今回我々は、細胞状態をマッピングして、細胞状態間の遷移をモデル化し、細胞運命決定を変換するための標的介入を予測する手法であるcSTAR(cell state transition assessment and regulation)について報告する。cSTARは、オミクスデータを入力として用いて、細胞状態を分類し、入力データを機構モデルに変換するワークフローを作り出す。これらの機構モデルにより特定されたコアとなるシグナル伝達ネットワークは、細胞全体のネットワークに影響を及ぼすことで細胞運命の遷移を制御する。cSTARは、シグナル伝達と表現型のデータを統合することで、細胞がどのようにワディントン地形で動き、採用する細胞運命を決定するかをモデル化する。特に、cSTARが、ワディントン地形における細胞の動きを制御するための介入を案出することは重要である。分化と増殖の細胞モデルにおいてcSTARを試験すると、定量的予測と実験データの間に高い相関があることが分かった。cSTARを、単一細胞データなどのさまざまなタイプの摂動やオミクスのデータセットに適用すると、その柔軟性とスケーラビリティーが実証され、新しい生物学的手掛かりがもたらされた。細胞の運命を相互変換する標的摂動を特定するcSTARの能力により、細胞の発生経路を操作するためのデザイナー手法や、機構に基づいた治療的介入が可能になるだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度