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ゲノミクス:パンデミック規模の系統ゲノミクスによるSARS-CoV-2の組換え全体像の解明

Nature 609, 7929 doi: 10.1038/s41586-022-05189-9

組換え系統を正確かつ適時に検出することは、遺伝的変異の解釈、エピデミックの伝播の再構築、淘汰や注目すべき変異株の特定、正確な系統学的解析を行う上で非常に重要である。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)時には、ゲノムデータの生成が既存の解析プラットフォームの能力を超えてしまい、このため、ウイルス進化のリアルタイム解析が妨げられている。今回我々は、新しい系統ゲノミクス的手法を用いて、SARS-CoV-2の組換え系統のほぼ包括的な系統発生を探索した。2021年5月に得られた160万の試料から作成した系統樹では、589の組換え事象が見つかった。この結果は塩基配列を解読したSARS-CoV-2ゲノムのおよそ2.7%には、検出可能な組換えの祖先があることを示している。組換えの切断点はスパイクタンパク質を含むゲノムの3′部分に偏って生じると推測された。我々の結果は、ウイルスの伝播性や毒力を増加させる可能性のある組換え系統の出現を正確に示すためには、組換えの適時解析が必要であることを明らかにしている。今回の手法によって、SARS-CoV-2や他のウイルスのパンデミックでも、ウイルスの組換えの包括的なリアルタイム追跡が可能になると期待される。

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