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構造生物学:甲状腺刺激ホルモン受容体のホルモンや抗体が関わる活性化

Nature 609, 7928 doi: 10.1038/s41586-022-05173-3

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、そのGタンパク質共役甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)の活性化を介して、必須の代謝ホルモンである甲状腺ホルモンの合成を制御している。自己抗体によってTSHRのシグナル伝達が異常になると、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺機能低下症が引き起こされ、これらは共に世界中で数百万人に及ぶ患者に影響を及ぼしている。今回我々は、TSHが結合した活性型のTSHRと、活性化を誘導する自己抗体M22が結合した活性型のTSHR(どちらもアロステリックアゴニストのML-109に結合している)、それに阻害性抗体K1-70が結合した不活性型のTSHRの構造を報告する。TSHとM22は共に、TSHRの細胞外ドメイン(ECD)に活性型の直立したコンホメーションをとらせる。対照的に、K1-70はTSHの結合を阻害していて、ECDに直立したコンホメーションをとらせることができない。TSHRの活性型および非活性型の構造を、黄体形成ホルモン/絨毛性性腺刺激ホルモン受容体(LHCGR)の活性型および非活性型の構造と比較することで、糖タンパク質ホルモン受容体に広く共通する活性化機構が明らかになった。この機構では、ヒンジとなるC末端ループからの10残基からなる保存されたフラグメント(P10)が、ECDのTSHR膜貫通ドメインとの相互作用を仲介する。注目すべき特徴の1つは、TSHRを取り囲む15個を超すコレステロール分子の存在で、これはTSHRが脂質ラフトに選択的に存在する可能性を裏付けている。これらの構造はまた、TSHRを活性化するTSHと自己抗体M22のよく似たECD押し上げ機構を明らかにしており、従ってグレーブス病の分子基盤を示している。

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