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医学:ボルネオ島における3万1000年前の肢の外科的切断
Nature 609, 7927 doi: 10.1038/s41586-022-05160-8
医学の発展に関しては、約1万年前の定住農耕社会の出現(新石器革命)によって、それまで非定住性の狩猟採集集団には知られていなかった数々の健康問題が生じ、それが先史時代の医療行為における最初の大革新をもたらした、という考えが一般的である。そうした変化にはより先進的な外科処置の発達が含まれ、「手術」が行われたことを示す既知最古の証拠はこれまで、左前腕が外科的に切除されて部分的に治癒した、新石器時代のヨーロッパの農耕民の骨格遺骸(フランスのビュティエ–ブランクール遺跡で出土)からなると考えられていた。年代が約7000年前とされる、この広く認められている切断例には、ヒトの解剖学に関する包括的な知識および相当の技術的熟練を要したと考えられ、従って、この事例は複雑な医療行為を示す最古の証拠と見なされてきた。これに対し、今回我々は、ボルネオ島で、おそらく小児期に左下腿の末端側3分の1が外科的に切断された、約3万1000年前の若者の骨格遺骸を発見したことを発表する。この個体はこうした処置を生き延びてさらに6~9年生存し、その遺骸は、インドネシア・ボルネオ島の東カリマンタン州のリャン・テボ(Liang Tebo)洞窟で埋葬された。この洞窟は、世界最古級とされる洞窟芸術が発見されている石灰岩カルスト地域に位置する。肢の切断の成功を示すこの予想外に古い証拠は、熱帯アジアの現生人類狩猟採集集団の少なくとも一部が、新石器時代の農耕への移行のはるか前に、高度な医療知識と技術を発達させていたことを示唆している。

