がんゲノミクス:前立腺がんのアフリカ系特有の分子的分類法
Nature 609, 7927 doi: 10.1038/s41586-022-05154-6
前立腺がんは、地理・民族的に大きな相違があることが特徴である。アフリカ系であることは重要なリスク要因であり、サハラ以南アフリカでの死亡率は世界平均の2.7倍である。これに寄与する遺伝要因や非遺伝要因、および関連する変異過程は分かっていない。今回我々は、祖先系(アフリカ系とヨーロッパ系)と地理的位置が異なる183人の前立腺がん患者について、未治療のがん試料の全ゲノム塩基配列解読を行い、サハラ以南アフリカの大規模ながんゲノミクス情報資源を作成して、約200万の体細胞バリアントを特定した。アフリカ系に特有の重要な知見として、腫瘍変異量の上昇、ゲノム変化の割合の増大、有害と予測される変異数の増加、変異シグネチャー総数の増加、ドライバー遺伝子NCOA2、STK19、DDX11L1、PCAT1、SETBP1の変異増加が得られた。我々は、体細胞変異のタイプを全て調べ、祖先系によって異なる包括的変異サブタイプ(GMS)として定義される、前立腺がんの分子的分類法を報告する。さらに中国系アジア人のデータを含めることにより、GMS-B(コピー数増加型)とGMS-D(高変異型)はアフリカ系集団に特有であり、GMS-A(低変異型)は普遍的(全ての祖先系に見られる)で、アフリカ系–ヨーロッパ系限定的サブタイプであるGMS-C(コピー数減少型)は臨床転帰不良を予測することが確認された。アフリカ系を含めることの臨床的利点に加えて、我々のGMSサブタイプは進化軌跡や変異過程の差異を明らかにしており、ありふれた遺伝要因と環境要因の両方が祖先系集団間の相違に寄与することを示唆している。遺伝子と環境の間の相互作用(ここでは、異なる祖先系における周辺環境の違いの影響、あるいは異なる周辺環境における祖先系の違いの影響と定義する)と同様に、GMSサブタイプは、がんにおける内因性および外因性の変異過程の代理指標となるため、画期的な研究で世界規模の多様な祖先系の組み入れが進むと予想される。

