免疫学:ヒトリンパ球における多様な変異の全体像
Nature 608, 7924 doi: 10.1038/s41586-022-05072-7
リンパ球のゲノムは、分化の際のプログラムされた変異、抗原に駆動される増殖、さまざまな微小環境での常在など、多くの脅威にさらされる傾向がある。今回我々は、リンパ球の単一細胞培養プロトコルを開発し、次いで、正常なナイーブB細胞、記憶B細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、造血幹細胞の計717試料について全ゲノムの塩基配列解読を行った。その結果、全てのリンパ球サブセットは造血幹細胞よりも点変異と構造バリアントを多く持ち、その量はナイーブ細胞よりも記憶細胞で多く、T細胞には生涯を通じてより高い割合で変異が蓄積することが分かった。免疫多様化のオフターゲット効果は、リンパ球におけるさらなる分化関連変異の約半数を占めていた。記憶B細胞は、胚中心反応の際、IGHVへのオンターゲット変異1つにつき、ゲノム規模で平均18のオフターゲット変異を獲得していた。リンパ球の構造変動は幹細胞より16倍大きく、欠失の約15%がRAG(recombinase-activating gene)のオフターゲット活性によるものであった。一部の記憶細胞では、紫外線への曝露によるDNA損傷や他の散発的な変異過程によって、数百から数千の変異が生じた。正常なB細胞の変異の量やシグネチャーは、多くのB細胞がんで見られるものとおおむね類似しており、これは、リンパ球の悪性形質転換が、正常な個体発生において広く機能しているのと同じ変異過程から生じることを示唆している。今回得られた正常なリンパ球の変異の全体像は、免疫多様化の際のプログラムされたゲノム改変のオフターゲット効果と、分化、増殖、多様な微小環境での常在の結果についての一連の事象を詳細に記録している。

