神経科学:社会的行動ネットワークにおける神経表現の変化
Nature 608, 7924 doi: 10.1038/s41586-022-05057-6
交尾と攻撃は、扁桃体延長部と視床下部の皮質下回路によって制御される、生得的な社会的行動である。分界条床核(BNSTpr)は、内側扁桃体からの、性特異的な嗅覚手掛かりを符号化した入力を受け取るノード(結節点)であり、これが次いで、交尾を制御する視床下部核[内側視索前野(MPOA)]と攻撃を制御する視床下部核[視床下部腹内側核腹外側部(VMHvl)]へとそれぞれ投射する。これまでの研究で、マウンティングや襲撃には雄のアロマターゼ陽性BNSTprニューロンが必要であり、これらのニューロンが全体的な活動レベルに照らして同種の性別を識別できることが実証されている。しかし、BNSTprでの神経表現やそれらの機能、視床下部でのそれらの変化についての特徴は明らかにされていない。今回我々は、社会的行動中の雄マウスで、BNSTprEsr1ニューロンのカルシウム画像化を行った。その結果、BNSTpr内で雌と雄にそれぞれチューニングされたニューロンの異なる集団が見つかり、その数は前者が後者を約2倍上回ることが分かった。こうした特徴は、内側扁桃体やMPOAのものと類似しているが、雄にチューニングされたニューロンの数が支配的なVMHvlとは対照的である。行動中のマウスでMPOAEsr1またはVMHvlEsr1の画像化を行いながら、BNSTprEsr1ニューロンを化学遺伝学的にサイレンシングしたところ、意外なことに、VMHvl内で雄支配的だった性的チューニングバイアスは雌支配的なものへと逆転したのに対し、交尾中のにおい嗅ぎ選択的なニューロンからマウンティング選択的なニューロンへの切り替えは、MPOAで減弱した。我々のデータはまた、BNSTprEsr1ニューロンが、同種の性識別には必須ではないことを示している。これらのニューロンはむしろ、視床下部で性別や行動に特異的な神経表現を形作ることによって、雄の社会的行動の欲求相から完了相への移行を制御している。

