Article

コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロン株亜系統BA.2.12.1、BA.4およびBA.5による抗体回避

Nature 608, 7923 doi: 10.1038/s41586-022-05053-w

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン株亜系統であるBA.2.12.1は米国で、BA.4/5は南アフリカで急増し、感染の主流となっている。これらの新しい亜系統はスパイクタンパク質の変異の種類が増えており、中和抗体を回避する能力がさらに高くなり、それによって新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンや治療用モノクローナル抗体の有効性がさらに低下する可能性が懸念されている。今回我々は、これらの急増するオミクロン亜系統について行った系統的な抗原解析から得られた知見を報告する。BA.2.12.1は、ワクチンおよびブースター既接種者の血清に対して、BA.2よりもわずかに高い程度(1.8倍)の抵抗性を示した。しかし、BA.4/5の抵抗性はかなり高く(4.2倍)、従ってワクチン接種後のブレークスルー感染を起こしやすいと考えられる。スパイクタンパク質の残基L452の変異はBA.2.12.1とBA.4/5の両方に見られ、受容体結合ドメインのいわゆるクラス2およびクラス3の領域を標的とする一部の抗体からの回避を促進する。BA.4/5に見られるF486V変異は、いくつかのクラス1およびクラス2抗体からの回避を促進するが、ウイルス受容体に対するスパイクタンパク質の親和性を低下させる。しかし、R493Q復帰変異は、BA.4/5の受容体への親和性を回復させ、その結果、受容体結合への適合性が回復する。臨床使用が承認されている治療用抗体の中で、ベブテロビマブだけがBA.2.12.1とBA.4/5の両方に対して完全な有効性を保持していた。SARS-CoV-2のオミクロン株系統は進化を続けており、伝播性がより高いだけでなく、抗体回避能力が高い亜系統が次々に生じている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度