Article

コロナウイルス:BA.2.12.1、BA.4およびBA.5はオミクロン感染によって誘導された抗体を回避する

Nature 608, 7923 doi: 10.1038/s41586-022-04980-y

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン株亜系統であるBA.2.12.1、BA.4およびBA.5は、BA.2系統よりも高い伝播性を示す。これらの最近出現した変異株の受容体結合能や免疫回避能については、緊急に調べる必要がある。今回我々は、スパイクタンパク質の構造比較と組み合わせて、BA.2.12.1、BA.4およびBA.5(以下、BA.4とBA.5はまとめてBA.4/BA.5とする)のアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に対する結合親和性は、BA.2と同程度であることを明らかにした。注目すべきことに、ワクチン3回接種者もしくはワクチン接種後にBA.1感染を発症した患者由来の血漿中で比べた場合、BA.2.12.1とBA.4/BA.5は、BA.2よりも中和抗体からの回避能が高くなっていた。その基盤となる抗体回避機構を解明するために、我々は、ウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメインに対して誘導された1640の中和抗体(BA.1感染からの回復者から単離した614の抗体を含む)について、回避変異プロファイル、エピトープの分布、オミクロン中和効率を調べた。ワクチン接種後のBA.1感染では、主に従来株[以下、野生型(WT)とする]のSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する液性免疫記憶が呼び起こされる。その結果として誘導された抗体は、WT SARS-CoV-2とBA.1の両方を中和でき、スパイク上のエピトープ(ACE2に結合しない)に集中的に結合する。しかし、これらの交差反応性中和抗体の大部分は、L452QやL452R、F486Vというスパイクタンパク質の変異によって回避される。BA.1感染は、BA.1を強力に中和するBA.1特異的抗体の新しいクローンも誘導することがある。しかし、これらの中和抗体は、D405NやF486V変異のためにBA.2やBA.4/BA.5によって大部分が回避されてしまい、またオミクロン以前の変異株に対する反応性は弱く、中和活性域が狭い。治療用の中和抗体であるベブテロビマブやシルガビマブは、BA.2.12.1とBA.4/BA.5を効率良く中和することができるが、S371FやD405N、R408S変異は最も活性範囲が広いサルベコウイルス中和抗体の活性を減弱させる。まとめると我々の結果は、オミクロン株は変異を起こしてBA.1感染によって誘導される液性免疫を回避する可能性があることを示しており、BA.1由来のワクチンブースターでは新規なオミクロン変異株に対して広範囲にわたる防御が達成できない可能性が考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度