Article

ゲノミクス:ハイイロオオカミのゲノム史から明らかになったイエイヌの2つの起源

Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04824-9

ハイイロオオカミ(Canis lupus)は家畜個体群を生じた最初の種であり、他の多くの大型哺乳類種が絶滅した最終氷期を通して広く分布し、それを生き延びた。しかし、過去のオオカミ個体群の歴史およびそれらが絶滅した可能性、あるいは現在のイヌ系統[イエイヌ(Canis familiaris)]の祖先となったオオカミがいつどこに生息していたかについては、ほとんど知られていない。今回我々は、ヨーロッパ、シベリア、北米から得られた、過去10万年にわたる72頭の古代オオカミのゲノムを解析した。その結果、オオカミ個体群の間には後期更新世を通して強いつながりが認められ、分化のレベルは現在と比較して1桁低かったことが明らかになった。こうした個体群のつながりによって、4万~3万年前のIFT88遺伝子の変異の急速な固定など、この時系列全体にわたる自然選択の検出が可能になった。我々は、イエイヌが全体として、ユーラシア西部よりもユーラシア東部の古代オオカミにより近縁であることを示す。これは、家畜化が東部で進行したことを示唆している。一方で我々は、近東およびアフリカのイエイヌでは、その祖先の最大半分が、現代のユーラシア南西部のオオカミに近縁な別の個体群に由来することも見いだした。これは、独立した家畜化過程または現地のオオカミとの交雑の存在を反映している。今回解析された古代オオカミのゲノムはいずれも、イエイヌのこれら2つの祖先と完全には一致せず、これは、正確な祖先個体群がまだ突き止められていないことを意味する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度