構造生物学:GABA再取り込み阻害の構造基盤
Nature 606, 7915 doi: 10.1038/s41586-022-04814-x
γ-アミノ酪酸(GABA)輸送体1(GAT1)は、抑制性神経伝達物質GABAがシナプス小胞から放出された際に、それをシナプス間隙から除去することで中枢神経系の神経興奮を調節している。GABA再取り込み輸送体の阻害によってシナプス間隙GABAレベルを上昇させることは、てんかんのような神経障害を治療するための確立された戦略の1つである。今回我々は、完全長の野生型ヒトGAT1について、臨床で用いられている阻害剤チアガビンと複合体を形成した状態の秩序立った構造部分(60 kDaにすぎない)のクライオ電子顕微鏡構造を決定した。得られた構造から、チアガビンはGABA放出経路の細胞内ゲートを遮断することでGAT1を内向きに開いたコンホメーションに固定し、それによって神経伝達物質の取り込みを抑制していることが明らかになった。我々の結果から、重要な抗けいれん薬であるチアガビンによるGAT1の混合型阻害に関する知見が得られた。我々の実験データから確認されたチアガビンの薬力学的プロファイルからは、チアガビンはまず、外向きに開いたコンホメーションの基質結合部位へ結合することが示唆されているが、今回得られた構造からはチアガビンが輸送体を内向きに開いたコンホメーションに留めていることが示された。これは、2段階からなる阻害機構と整合する。今回提示されたGAT1の構造は、この重要な神経伝達物質輸送体の生物学的性質および薬学的性質に関する重要な手掛かりをもたらし、神経調節物質の合理的で詳細な設計図を示している。加えて、この結果は、膜タンパク質の構造決定という難問について、単粒子クライオ電子顕微鏡法で可能と考えられている限界を大きく押し広げるものである。

