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原子分子物理学:多原子分子に結合する陽電子の多体理論

Nature 606, 7915 doi: 10.1038/s41586-022-04703-3

分子に結合する陽電子は、極めて増強された陽電子消滅や陽電子を用いた分子分光のカギである。陽電子の結合エネルギーは約90種類の多原子分子について測定されているが、陽電子–分子結合の第一原理による正確な理論的記述はまだ難しい。実験的に調べられた分子のうち、ab initio計算が存在するのはわずか6種類であり、これらの計算結果は、極性分子の実験結果とせいぜい25%の精度でしか一致せず、非極性分子における結合を予測できない。理論的な課題は、電子雲の分極、電子–陽電子クーロン相互作用の遮蔽、仮想ポジトロニウム生成(分子の電子が一時的に陽電子にトンネリングする)の独特な過程など、強い多体相関を正確に記述する必要があることに起因している。今回我々は、実験結果と優れた一致を示す(場合によっては1%以内)、陽電子–分子相互作用に関多体理論を開発して、ホルムアミドや核酸塩基における結合を予測した。我々の枠組みは、多体相関の役割を定量的に捉え、それらの極性分子における結合の増強への重要な効果を示しており、これによって非極性分子での結合が可能になるとともに、消滅速度が2〜3桁増大する。今回の多体アプローチは、分子や凝縮物質における陽電子散乱や消滅γ線スペクトルに拡張でき、材料科学診断の改善、反物質を用いた技術(陽電子トラップ、陽電子ビーム、陽電子放出断層撮影法など)の開発、銀河系における陽電子の理解に必要な、基礎的な知見と予測能力をもたらす。

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