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遺伝学:失われた遺伝率を捉えてトマトの育種を強化するグラフパンゲノム
Nature 606, 7914 doi: 10.1038/s41586-022-04808-9
ゲノム規模の関連解析における失われた遺伝率(missing heritability)は、複雑な生物学的形質の遺伝解析において重大な問題となっている。この問題の解決策は、原因となる全ての遺伝的バリアントを明らかにし、それぞれの寄与を評価することである。本論文では、トマト(Solanum lycopersicum)について、参照レベルの新規ゲノムアセンブリ32例を含む838例のゲノムから得た、1900万個以上のバリアントを正確にカタログ化することで構築されたグラフパンゲノムを提示する。我々は、このグラフパンゲノムを用いて、計2万323の遺伝子発現形質および代謝物形質について、ゲノム規模の関連解析と遺伝率の推定を行った。得られた形質の遺伝率の平均推定値は0.41で、単一の線形参照ゲノムを用いた場合の0.33より高かった。この遺伝率推定値の24%の上昇は主に、グラフパンゲノムを用いて特定された新たな原因構造バリアントを含めることにより不完全な連鎖不平衡を解消したことに起因する。さらに、対立遺伝子および座位の不均一性を解消することによって、構造バリアントの、農学的に重要な形質の根底にある遺伝的因子を特定する能力が向上し、例えば、可溶性固形分に寄与する可能性のある新たな2遺伝子の特定につながった。これらの新たに特定された構造バリアントは、マーカー支援選択およびゲノム選択の両方によるトマトの遺伝的改良を促進するだろう。我々の研究は、複雑な形質の遺伝率に関する理解を深めるとともに、作物育種におけるグラフパンゲノムの威力を実証している。

