植物科学:被子植物の高地適応のための酸素感知機構
Nature 606, 7914 doi: 10.1038/s41586-022-04740-y
顕花植物(被子植物)は極端な高地でも生育可能で、海抜6400 mという標高でも生育が観察されているが、植物の高地特異的な適応を可能にしている分子機構は不明である。高度上昇に伴う顕著な特徴の1つは、酸素分圧(pO2)の低下である。今回我々は、クロロフィル生合成(分子酸素を必要とする)と低酸素関連遺伝子の発現という面から、高度と酸素感知の関係について調べた。その結果、被子植物種の黄化実生では、光毒性クロロフィル前駆体プロトクロロフィリドの定常状態レベルが、大気中酸素濃度の感知に影響を受けることが明らかになった。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、この過程は、PCO(PLANT CYSTEINE OXIDASE)のN-デグロン経路基質である転写因子ERFVII(GROUP VII ETHYLENE RESPONSE FACTOR)によって仲介されている。ERFVIIはFLU(FLUORESCENT IN BLUE LIGHT)の発現を正に調節しており、クロロフィル生合成の最初の決定的段階を抑制するFLUは、ERFVIIによって負に調節されるテトラピロール合成酵素と不活性化複合体を形成することで、プロトクロロフィリドを抑制する。多様な被子植物クレードを代表する自然個体群では、プロトクロロフィリドの定常状態レベル、不活性化複合体構成要素の発現、低酸素関連遺伝子の発現に関して、高度に応じた酸素依存的な標高クラインが見られることが分かった。また、対照的な標高のシロイヌナズナ系統では、高度依存的なERFVIIの活性と蓄積が見られた。これらの知見は、酸素感知系の感受性の変化を通じた絶対高度に対する適応の遺伝的機構を明らかにしている。

