神経科学:さまざまな障害におけるアストロサイト反応性の多様な転写調節
Nature 606, 7914 doi: 10.1038/s41586-022-04739-5
アストロサイトは、中枢神経系の損傷や疾患に応答して反応性の変化を起こし、そうした障害の転帰に影響を及ぼす。これらの変化のうち、差次的発現遺伝子群(DEG)は、その状況依存的な多様性や調節があまり分かっていない。今回我々は、RNA塩基配列解読、タンパク質検出、ATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin with high-throughput sequencing)、条件的遺伝子欠失などの、生物学的解析とインフォマティクス的解析を組み合わせて、マウスとヒトの多様な中枢神経系障害において、アストロサイトの反応性と関連している可能性のある1万2000以上のDEGを差次的に制御する転写調節因子を予測した。その結果、アストロサイトの反応性と関連したDEGは、さまざまな障害にわたって顕著な不均一性を示すことが分かった。転写調節因子には障害特異的な違いも見られたが、61の転写調節因子からなるコアグループは、マウスとヒトの両方で複数の障害にわたって共通していることが特定された。DEGの多様性は、転写因子間の組み合わせによる状況特異的な相互作用により決定されることが、実験的に明らかになった。特に、同じ反応性転写調節因子が、異なる障害では顕著に異なるDEGコホートを調節することができ、DNA結合モチーフへの転写調節因子アクセスの変化には障害によって顕著な違いが見られ、DEG変化には複数の反応性転写調節因子が決定的に必要な場合があることは重要である。反応性を調節することにより、転写調節因子が障害の転帰を大きく変化させられることが分かり、治療標的となる可能性が示唆された。我々は、障害に関連する反応性アストロサイトのDEGと、それらの予測される転写調節因子について、検索可能な情報資源を提供する。我々の知見は、アストロサイトの反応性と関連した転写の変化は極めて不均一であり、状況特異的な転写調節因子相互作用の組み合わせを介して、膨大な数の潜在的DEGからカスタマイズされていることを示している。

