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神経科学:嗅覚経験はニューロンのIGF1を介してグリオーマ形成を調節する
Nature 606, 7914 doi: 10.1038/s41586-022-04719-9
動物は、におい、音、光、接触などのさまざまな感覚刺激を、周囲の環境から絶えず受け取っている。こうした感覚入力は、動物が食物を探したり捕食者を避けたりするのに不可欠だが、自身の生理的状態にも影響を及ぼし、がんなどの疾患を引き起こす可能性がある。最も致死性の高い脳腫瘍である悪性グリオーマ(神経膠腫)は、細胞レベルでニューロンと密接に情報交換を行っていることが知られている。しかし、通常の生活条件下で、外的な感覚刺激が悪性グリオーマの発生に直接影響を及ぼし得るかどうかはまだ分かっていない。今回我々は、嗅覚がグリオーマ形成を直接調節し得ることを示す。オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)に由来する成熟後グリオーマ形成を繰り返す自然発症マウスモデルでは、グリオーマは脳内嗅覚回路の最初のリレー部位である嗅球に好発した。嗅覚受容ニューロン(ORN)の活動を操作したところ、グリオーマの発生に影響が現れた。機構的には、嗅覚刺激はORNから感覚情報を受ける僧帽細胞・房飾細胞(M/T)を興奮させ、活動依存的にインスリン様増殖因子1(IGF1)を放出させる。M/T細胞のIgf1遺伝子を特異的にノックアウトしたところ、グリオーマ形成が抑制された。また、前がん段階の変異OPCでIGF1受容体をノックアウトすると、ORNの活動依存的な有糸分裂誘発作用は消失した。これらの知見は、感覚経験とグリオーマ形成がそれぞれの対応する感覚ニューロン回路を介してつながっていることを立証している。

