遺伝学:ヒトの生涯にわたる造血のクローン動態
Nature 606, 7913 doi: 10.1038/s41586-022-04786-y
ヒト造血での加齢に関連した変化は、再生能の低下、血球減少症、免疫機能不全、血液がんリスクの増加を引き起こすが、70歳以降にこのような機能低下が急激に起こる理由は分かっていない。今回我々は、0〜81歳の10人の被験者の造血系細胞の単一細胞由来コロニーから得た3579例のゲノムについて、塩基配列を解読した。造血幹細胞・多能性前駆細胞(HSC/MPP)では、出生後に平均で1年当たり17の変異が蓄積し、テロメア長は1年で30塩基短くなることが分かった。65歳未満の成人での造血は大幅にポリクローナルで、クローン多様性が高く、2万~20万個の安定したHSC/MPP集団が血液産生に均等に関与していた。対照的に、75歳以上の被験者の造血系では、クローン多様性に大幅な低下が見られた。より高齢な各被験者では、造血の30~60%が12~18の独立したクローンによって占められ、それぞれのクローンは1~34%の血液産生に寄与していた。クローンの大半は、被験者が40歳になる前に拡大を開始したが、既知のドライバー変異を有していたのは22%だけだった。ゲノム規模の選択解析からは、34分の1から12分の1の非同義変異がドライバー変異であり、これらが生涯を通じて一定の速度で生じ、血液がんで特定されたものよりも多くの遺伝子に影響を及ぼすと推定された。また、男性でのY染色体の喪失は、選択的な利益をもたらすことも分かった。一定サイズの幹細胞集団を持ち、中程度の適応度恩恵をもたらすドライバー変異を一定速度で獲得する造血のシミュレーションによって、高齢者のクローン構造の急激な変化が完全に説明された。クローン多様性の急速な低下は、高齢者の造血系で見られる普遍的な特徴であり、これまでに特定されているよりも多くの遺伝子に作用する広範な正の選択によって支えられている。

