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分子生物学:補因子依存性の違いがヒトエンハンサーのタイプの違いを規定している

Nature 606, 7913 doi: 10.1038/s41586-022-04779-x

あらゆる多細胞生物は、ゲノム中のエンハンサーによって調節される遺伝子転写の差異に依存している。エンハンサーは、転写因子によって動員される補因子を介して機能する。最近、全てのエンハンサーに全ての補因子が必要なわけではないことを示す証拠が増えてきているが、こういった知見がエンハンサーのより一般的な原則を反映しているのか、それともある種のエンハンサーに特有のものなのかは、まだ解明されていない。今回我々は、ヒトのエンハンサーを補因子への依存性によって分類し、このような分類が、エンハンサーの塩基配列やクロマチンの多様性、さまざまな遺伝子調節プログラムでのエンハンサーの役割を理解するための枠組みになることを明らかにする。我々はHCT116細胞でSTARR-seqを使い、8種類の補因子の急激な分解後に、ヒトゲノム全域にわたってエンハンサーの活性を定量的に調べた。この分析によって、エンハンサーには、補因子の必要性や塩基配列、クロマチン特性が独特な、さまざまなタイプがあることが分かった。一部のエンハンサーはメディエーターのコアサブユニットMED14やブロモドメインタンパク質BRD4の欠乏に対して非感受性であり、特有の転写プログラムを調節していた。特に、カノニカルなメディエーターはP53に応答するエンハンサーには不必要らしく、MED14欠乏細胞では内在性のP53標的遺伝子が誘導された。同様に、BRD4はCCAATボックスやTATAボックスを持つ遺伝子(ヒストン遺伝子やLTR12レトロトランスポゾンを含む)の転写や熱ショック遺伝子の誘導には必要なかった。補因子への依存性に基づいたエンハンサーのこのような分類から、広く使われている補因子をバイパスすることのできる独特なタイプのエンハンサーの存在が明らかになった。これにより、転写を活性化する選択可能な複数の方法が遺伝子発現プログラムに違いをもたらす仕組みが明らかになり、エンハンサーの機能と調節特異性を解明するための概念的枠組みが得られた。

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