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がん:ネオアンチゲンの質から膵臓がん生存者の免疫編集を予測する

Nature 606, 7913 doi: 10.1038/s41586-022-04735-9

がん免疫編集はがんが持つ特徴の1つであり、これによってリンパ球が免疫原性の高いがん細胞を殺し、免疫原性の低いクローンが集団内で優勢になることが予測される。こうした免疫編集はマウスでは証明されているが、ヒトのがんでも自然に起こるのかどうかは不明である。今回我々は、この課題に取り組むために、70のヒト膵臓がんが10年間でどのように進化したかを調べた。その結果、原発腫瘍でT細胞活性がより強かった膵臓がんのまれな長期生存者は、変異の蓄積期間がより長いにもかかわらず、免疫原性変異(ネオアンチゲン)がより少なく、遺伝的不均一性のより低い再発性腫瘍を形成していることが明らかになった。これらの観察結果の原因が免疫編集であるかどうかを定量的に調べるために、我々は、あるネオアンチゲンが免疫原性(質が高い)となるのは「非自己性」と「自己性」という2つの特徴によると推測した。「非自己性」はネオアンチゲンの既知の抗原との類似性に基づき、「自己性」はネオアンチゲンが野生型ペプチドと比べて、MHCへ特異的に結合したり、T細胞を活性化したりするのに必要な抗原距離に基づく。我々はこれらの特徴を用いて、がんクローンの適応度を、質の高いネオアンチゲンを認識するT細胞の総コスト(発がん性変異による利得により相殺される)と推定した。このモデルを用いて、腫瘍のクローン進化を予測したところ、膵臓がんの長期生存者の再発性腫瘍は質の高いネオアンチゲンが少ないことが明らかになった。従ってこれは、ヒトの免疫系がネオアンチゲンを自然に編集している証拠である。さらに我々は、免疫圧が、がん細胞集団の経時的な進化を誘導する仕組みを予測するためのモデルを提示する。我々の結果は、より広義には、免疫系が基本的に宿主の遺伝的変化を監視して、がんを抑制していることを示している。

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