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神経科学:記憶の連結のための時間枠を閉じるCCR5
Nature 606, 7912 doi: 10.1038/s41586-022-04783-1
現実世界での記憶は、特定の文脈内で形成され、それだけが単独で獲得されたり想起されたりすることはまれである。記憶の構成で重要な変数の1つは時間で、時間的に近接して経験した事象は、意味的に関連している可能性が高く、一方、長い間隔をおいて経験した事象は関連が薄い。しかし、脳が異なる時間に起こった事象をどのようにして区別しているのかは分かっていない。今回我々は、HIV感染の共受容体として知られる免疫受容体CCR5(C-C chemokine receptor type 5)の発現が、文脈記憶形成後に遅れて(12〜24時間)増加することが、その記憶とそれに続く記憶とを関連付ける、または連結する時間枠の長さを決めることを示す。マウス背側海馬CA1ニューロンでのCCR5のこうした遅延発現は、ニューロンの興奮性を下げ、それが次にニューロンの記憶割り付けを負に調節して、背側CA1記憶細胞集団の間の重なりを減らす。この重なりの減少は、1つの記憶が他の記憶の再生を引き起こす能力に影響を及ぼし、従って記憶の連結の時間枠を閉じることになる。今回の知見はまた、加齢と連関してニューロンのCCR5およびCCR5リガンドの発現が増加することが、加齢マウスでの記憶連結の障害につながることも示しており、これは、Ccr5のノックアウトや米国食品医薬品局(FDA)で承認されているCCR5阻害薬によって回復できる可能性があり、臨床的な示唆を与える実験結果である。まとめると今回の知見は、記憶の連結の時間枠を形作る分子的・細胞的機構の手掛かりとなる。

