神経科学:誤配線と終末器官の標的化の異常で生じる神経障害性疼痛
Nature 606, 7912 doi: 10.1038/s41586-022-04777-z
神経損傷は、慢性の疼痛や軽い接触に対する過敏性(異痛症)の他、損傷した神経と非損傷神経との共存部位における感覚の喪失にもつながる。このように複雑で互いに矛盾する症状を説明する機構はまだ知られていない。今回我々は、マウスの皮膚内において、末梢で侵害刺激を感知する神経線維(侵害受容繊維)と軽い接触を感知する神経繊維(低閾値求心性線維)の遺伝子で標識された集団を、神経損傷後10か月以上にわたり縦断的かつ非侵襲的に画像化し、同時に同じ個体で疼痛関連行動を追跡した。完全に除神経された皮膚領域は、初めは感覚を失ったが、徐々に通常の感受性を取り戻し、損傷の数か月後には著しい異痛症と軽い接触への忌避を示すようになった。こうした再神経支配に誘発される神経障害性疼痛には、除神経領域に伸長した侵害受容繊維による損傷前の神経支配パターンの正確な再現が関与しており、この伸長は血管に誘導されていて、皮膚内での異常な末端接続と低閾値求心性を模倣する活性化閾値の低下を示す。対照的に、通常は接触感覚の仲介と損傷後の非損傷領域での異痛症をもたらす低閾値求心性繊維は、損傷領域を再神経支配せず、侵害受容繊維のみによるマイスナー小体などの触覚終末器官への異常な神経支配につながった。侵害受容繊維を遺伝的に除去すると、再神経支配に伴う異痛症が完全に無効化された。従って今回の結果は、再神経支配における構造の可塑性、異常な末端接続、侵害受容繊維の機能不全により駆動される慢性神経障害性疼痛の一種の出現を明らかにするとともに、臨床で観察され、患者に重い負荷を与えることのある矛盾した感覚症状について、機構的枠組みを提示するものである。

