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分子生物学:精製したヒトタンパク質を使った速くて効率の良いDNA複製

Nature 606, 7912 doi: 10.1038/s41586-022-04759-1

染色体の複製は、レプリソームと呼ばれる複雑に入り組んだタンパク質集合体によって行われる。レプリソームでは、DNAポリメラーゼのPolδとPolε、DNAポリメラーゼα-プライマーゼ(Polα)と、AND-1、CLASPIN、TIMELESS–TIPIN[出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、それぞれCtf4、Mrc1、Tof1–Csm3として知られる]などのアクセサリータンパク質が、CDC45–MCM–GINS(CMG)複製ヘリカーゼの周囲に配置されている。これらの因子がヒトのDNA複製にどのように関わっているのか、また最適なDNA合成を行うには他のタンパク質が必要なのかどうかはほとんど分かっていない。それは、機能を持ったヒトのレプリソームが精製タンパク質から再構築されたことがないからである。今回我々は、43個のポリペプチドからなる11個の精製されたヒト複製因子を用いて、DNA合成を迅速に効率よく行えるヒトレプリソームを、生化学的に再構築した。Polεは最適なリーディング鎖合成に不可欠だったが、Polδはそうではなかった。予想外だったのは、Polεが関わるリーディング鎖の複製が、スライディングクランプの処理能力に関わる因子PCNAとまた別のクランプローダー複合体CTF18–RFCに高度に依存していることである。我々は、CLASPINとTIMELESS–TIPINがレプリソームの進行に関わる仕組みを明らかにし、出芽酵母のレプリソームとは対照的に、AND-1が直接的にリーディング鎖の複製を亢進させることを示す。さらに、AND-1はPolαに結合するが、この結合はラギング鎖の複製には必要でないことから、Polαはプライミングを行うために、AND-1に依存しない機構によってヒトレプリソームへ機能的に動員されることが示唆される。これらの知見を総合することによって、ヒトのレプリソームがどのような仕組みでリーディング鎖、ラギング鎖DNAの複製を迅速に効率よく行うかが明らかになり、ヒトレプリソームやレプリソームと他のDNA代謝過程との相互作用についての今後の研究に役立つ強力な系が得られた。

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