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生物地球化学:将来の海洋におけるシリカ移出の増大によって生じる全球的な珪藻類の減少
Nature 605, 7911 doi: 10.1038/s41586-022-04687-0
珪藻類は海洋の一次生産の最大40%を占めており、その増殖とオパール質の殻の形成にはケイ酸が必要である。生理学的および生態学的なレベルでは、珪藻類は海洋酸性化に耐えるばかりか、海洋酸性化から利益すら受けると考えられている。しかし、将来の海洋における全球規模の応答や生物地球化学的循環への影響は、ほとんど分かっていない。今回我々は、さまざまなバイオームの自然プランクトン群集を用いてin situのメソコスム実験を5件行い、2100年に予測されるpCO2条件の下では、海洋酸性化によって生物起源の沈降物のケイ素(Si)と窒素(N)の元素比が17 ± 6%増大することを見いだした。このSi:N比の変化は、海水のpHが低下してシリカの化学的溶解が減速することに起因すると思われる。この知見を全球的な堆積物トラップデータを用いて検証したところ、海水柱のpHがSi:N比に広範な影響を及ぼすことが裏付けられた。地球システムのモデルシミュレーションでは、pHの低下に起因する沈降物のシリカ溶解の将来の減少によって海洋表層の利用可能なケイ酸が減少し、2200年までに海洋酸性化によって珪藻類が全球的に13~26%減少することが示された。今回の結果は、これまでの実験研究の結論とは著しく対照的であるため、海洋の変化の生物学的影響に関する現在の理解が、地球システムの予想外のフィードバック機構によって全球規模でいかに大きく変わり得るかを例証している。

