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がん:PI3Kδの間欠的な阻害は抗腫瘍免疫を持続させ、免疫関連有害事象を抑制する

Nature 605, 7911 doi: 10.1038/s41586-022-04685-2

ホスホイノシチド3-キナーゼδ(PI3Kδ)はリンパ球において重要な役割を担っており、このPI3Kを標的とする阻害剤はB細胞悪性腫瘍の治療用に承認されている。固形腫瘍のマウスモデルでの研究は、PI3Kδ阻害剤(PI3Kδi)が抗腫瘍免疫を誘導できることを示しているが、ヒトの固形腫瘍に及ぼす効果は分かっていない。今回我々は、ネオアジュバント療法の二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験において、頭頸部がん患者を対象として、PI3KδiであるAMG319の効果を評価した(EudraCT no. 2014-004388-20)。PI3Kδ阻害によって、腫瘍に浸潤する制御性T(Treg)細胞の数が減少し、腫瘍浸潤T細胞の細胞傷害活性が高まった。本試験でのAMG319用量では、免疫関連有害事象(irAE)により、AMG319投与を受けた21人の患者のうち12人で治療を中止する必要があり、Treg細胞に対する全身的な影響が示唆された。これに対応して、マウスモデルでは、PI3KδiによってTreg細胞の数が全身的に減少し、大腸炎が引き起こされた。単一細胞RNA塩基配列解読の解析から、PI3Kδiにより大腸組織常在性ST2 Treg細胞が喪失すること、これには病原性17型ヘルパーT(TH17)細胞および17型CD8+ T(TC17)細胞の増殖が伴っていることが明らかになった。これがおそらくは毒性に関与していると思われ、irAEが出現する特定の作用機序を示している。PI3Kδiの間欠投与を行う修正治療レジメンは、マウスモデルで大腸組織に病原性T細胞を誘導することなく、腫瘍増殖を有意に減少させることから、別の投薬レジメンにより毒性を制限できる可能性が示された。

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