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化学生態学:蚊の脳はヒトのにおいの独特な特徴を符号化して宿主探索を駆動する

Nature 605, 7911 doi: 10.1038/s41586-022-04675-4

世界的に分布を広げた蚊であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)は、ヒト刺咬に特化しており、疾病の強力な媒介昆虫となっている。宿主探索中の雌の蚊は、他の動物のにおいよりもヒトのにおいを強く好むが、蚊がこれら2種類のにおいをどのように識別しているかは知られていない。脊椎動物のにおいは揮発性化学物質の複雑な混合物であり、その多くの成分は共通しているため、それらの識別は感覚符号化の問題として興味深い。今回我々は、ヒトと動物のにおいがそれぞれ、ネッタイシマカの触角葉において、異なる組み合わせの嗅覚糸球体で活動を引き起こすことを示す。ある1つの糸球体は、ヒトのにおいで特に強く活性化されるが、動物のにおいにはほとんどまたは全く応答しなかった。こうしたヒトに感受性を持つ糸球体は、長鎖アルデヒドであるデカナールとウンデカナールに選択的に調整されており、これらの化学物質はヒトのにおいに一貫して多く含まれていて、おそらくヒト特有の皮膚脂質に由来することが示された。我々はさらに、合成混合物を用いて、これらのヒト感受性糸球体のシグナル伝達が、風洞実験での長距離の宿主探索を有意に強化することを実証し、これによって、動物のにおいよりヒトのにおいへの選好性が再現された。今回の研究は、動物の脳が、本質的な生物学的関連を持つ複雑なにおい刺激の重要な要素を抽出して、単純な神経符号へとまとめている可能性を示唆するとともに、次世代の媒介昆虫制御戦略の設計に向けた標的を示すものである。

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