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加齢:若齢マウスのCSFはFgf17を介して老齢マウスにおけるオリゴデンドロサイト発生と記憶力を回復させる
Nature 605, 7910 doi: 10.1038/s41586-022-04722-0
近年、全身の環境が生涯を通じてどのように脳を形作るかについての理解が進み、脳の老化を遅らせるための多くの介入戦略につながっている。脳脊髄液(CSF)は、脳細胞の周辺環境を作り出し、脳細胞に栄養となる化合物を供給している。今回我々は、若齢マウスのCSFを老齢マウス脳に直接注入すると、記憶機能が改善されることを発見した。海馬の偏りのないトランスクリプトーム解析から、この若返りCSF環境に最も反応するのはオリゴデンドロサイトであることが明らかになった。さらに、若齢マウスのCSFは、加齢海馬やオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)初代培養で、OPCの増殖と分化を促進することが分かった。SLAMseqを用いた新生mRNAの代謝的標識付けにより、アクチン細胞骨格の再構成を促進する転写因子である血清応答因子(SRF)が、若齢マウスのCSFへの曝露後に起こるOPC増殖のメディエーターであることが示された。海馬OPCでのSRFの発現は加齢に伴って低下するが、その経路は若齢マウスのCSFの急性注入によって誘導される。CSF中のSRF活性化因子候補のスクリーニングから、繊維芽細胞成長因子17(Fgf17)の注入のみで、老齢マウスでOPCの増殖と長期記憶の固定を誘導するのに十分であり、一方でFgf17を遮断すると若齢マウスで認知機能が低下することが分かった。これらの知見は、若齢マウスのCSFが持つ若返りの能力を実証するものであり、Fgf17が加齢脳においてオリゴデンドロサイト機能を回復させるための重要な標的であることを明らかにしている。

