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コロナウイルス:TMPRSS2阻害剤はSARS-CoV-2株横断的な予防薬や治療薬として働く

Nature 605, 7909 doi: 10.1038/s41586-022-04661-w

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、依然として世界的な公衆衛生上の危機となっている。広範なワクチン接種キャンペーンが進行中だが、懸念される変異株(VOC)の出現により、その効果は低下している。宿主を対象にした治療薬や予防薬の開発によって、そのような抵抗性を抑え、VOCに対して緊急に必要とされる防御を提供できる可能性がある。ウイルスの侵入を阻害する魅力的な薬理学的標的としては、TMPRSS2などのII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TTSP)がある。これらのプロテアーゼは、ウイルスのスパイクタンパク質を切断して、細胞侵入のための融合ペプチドを露出させるため、ウイルスの生活環の中で不可欠な役割を担っている。今回我々は、N-0385という小分子化合物を見いだし、その特性を解析した。N-0385は、ヒト肺細胞やドナー由来の大腸オルガノイドでのSARS-CoV-2感染阻害において、低ナノモル濃度の有効性と106以上の選択指数を示す。N-0385はCalu-3細胞において、SARS-CoV-2のVOCであるB.1.1.7(アルファ)株、B.1.351(ベータ)株、P.1(ガンマ)株、B.1.617.2(デルタ)株の侵入を阻害した。さらに、重症COVID-19のK18ヒトACE2トランスジェニックマウスモデルでは、N-0385は複数回投与後あるいは単回投与後でも、高いレベルの予防効果や治療効果を示すことが分かった。まとめると我々の知見は、TTSPを介したタンパク質分解によるスパイクタンパク質の成熟がin vivoでのSARS-CoV-2感染に重要であることを明らかにし、N-0385はCOVID-19やSARS-CoV-2の新たなVOCに対する有効な早期治療の選択肢となることを示唆している。

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