Article

コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロン亜系統の抗体回避特性

Nature 604, 7906 doi: 10.1038/s41586-022-04594-4

2021年11月にボツワナ共和国で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン(B.1.1.529.1、つまりBA.1)変異株が特定されると、スパイク糖タンパク質に抗体回避につながる可能性のある多数の変異があることから、直ちに懸念が生じた。我々や他のグループは最近、そのような懸念を裏付ける結果を報告した。その後、オミクロン株の進化の継続的なサーベイランスによって、2つの亜系統の流行が起こったことが明らかとなった。1つはR346K変異を持つBA.1(BA.1+R346K、別名BA.1.1)であり、もう1つは、8つのユニークなスパイク変異を有し、BA.1で見られる13か所のスパイク変異を持たないB.1.1.529.2(BA.2)である。今回我々は、これまでの研究を進展させ、これらの新たな亜系統の抗原特性を明らかにした。野生型SARS-CoV-2に感染した患者または現在のmRNAワクチン接種者に由来するポリクローナル血清では、BA.1+R346KとBA.2の両方に対する中和活性が大幅に失われており、この低下の度合いは、BA.1で以前に報告されているものと同程度だった。以上の知見は、これら3つのオミクロン亜系統が野生型SARS-CoV-2から抗原的に等距離にあり、そのため、現在のワクチンの有効性に対して同程度の脅威となることを示している。またBA.2は、調べた19の中和モノクローナル抗体のうち17の抗体に対して顕著な抵抗性を示し、そうした抗体にはBA.1やBA.1+R346Kに対してかなり活性を保持しているS309(ソトロビマブ)が含まれていた。本結果は、最近認可されたLY-CoV1404(ベブテロビマブ)を除いて、オミクロン変異株の全ての亜系統を十分にカバーできる認可されたモノクローナル抗体療法がないことを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度