生化学:テロメアのシェルタリンタンパク質TPP1を含むヒト活性型テロメラーゼの構造
Nature 604, 7906 doi: 10.1038/s41586-022-04582-8
ヒトのテロメラーゼはRNAとタンパク質の複合体で、テロメア繰り返し配列TTAGGGの多数のコピーを合成することで直鎖状染色体の3′末端を伸長させる。テロメラーゼの活性はがんの進行、幹細胞の自己複製、細胞老化の決定因子である。テロメラーゼはテロメアへと動員され、テロメアのシェルタリンタンパク質TPP1によって活性化され、テロメア繰り返し配列の合成を行う。ヒトのテロメラーゼは、触媒中心のリボ核タンパク質とbox H/ACAリボ核タンパク質からなる二葉構造である。今回我々は、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)とテロメラーゼRNA(TER、別名hTR)からなるヒトテロメラーゼ触媒コア、それにシェルタリンタンパク質TPP1を含むテロメラーゼのクライオ電子顕微鏡構造を報告する。TPP1は、TERTに独特のTEN(telomerase essential N-terminal)ドメインと、TERTに独特のTRAP(telomerase RAP motif)からなる構造化された界面を形成しており、TEN–TRAPのコンホメーション変化はTPP1が結合すると抑えられる。このことから、動員と活性化への必要条件が明らかになった。これらの構造からはさらに、鋳型とテロメアDNA処理に関わっているTERTとTERの複数の要素(TENドメインとTRA-thumbヘリックスチャネルなど)が、テトラヒメナ(Tetrahymena)のテロメラーゼで見られるものと構造学的にほとんど相同であることが明らかになり、テロメラーゼ活性化機構への独特な知見が得られた。テロメラーゼ阻害剤BIBR1532の結合部位は、TERシュードノットとTERT thumbドメイン間の重要な相互作用と重なっている。テロメア病につながる多数の変異はTERT–TER界面およびTEN–TRAP–TPP1界面に位置しており、これはTER–TERTとTPP1の相互作用のテロメラーゼの活性や動員への重要性と、その薬剤標的としての重要性をはっきり示している。

