Article
分子生物学:エンハンサー–プロモーター相互作用を介する非線形的な転写制御
Nature 604, 7906 doi: 10.1038/s41586-022-04570-y
哺乳類の染色体構造は、エンハンサーとプロモーターの間の三次元の相互作用を変化させることによって転写を調節していると考えられており、CTCFに仲介されるループとトポロジカルドメイン(TAD)を介する変化は特に重要視されている。しかし、染色体の相互作用が、実際にどのように転写出力に変換されるのかは、まだはっきり分かっていない。今回我々はこの問題を解明するため、固定した1つのプロモーターに対して、1つのエンハンサーを染色体上の密に集まった多数の部位に配置し、プロモーター出力と、調節や構造がなるべく複雑でないゲノム領域内の相互作用を測定した。数百種類の細胞株の定量的解析により、エンハンサーの転写に対する影響はプロモーターとの接触確率に依存しており、その関係性は非線形的であることが分かった。数理モデル化からは、このような非線形性が生じるのは、個々の細胞で起こった一時的なエンハンサー–プロモーター相互作用が、プロモーターのもっと遅いバースト動態に変換され、そのために相互作用の時間的動態と転写の時間的動態とが連動しなくなることによる可能性が示唆された。このことから、遠位のエンハンサーがゲノム中の離れた場所からどのように作用するのか、また、トポロジカルドメインの境界が遠位エンハンサーをブロックする仕組みが推測される。さらに、エンハンサー強度は転写の絶対レベルを決定するとともに、CTCFを介した転写の絶縁に対するプロモーターの感受性も決定することが分かった。これらの測定結果により、長距離の転写調節の際に、染色体の構造が状況に応じて果たす役割の一般的原理が明確になった。

