生物物理学:天然の膜を横切るロドプシン受容体シグナル伝達カスケードを捉える
Nature 604, 7905 doi: 10.1038/s41586-022-04547-x
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は細胞表面にあって、多様な刺激に応答して細胞膜を横切るシグナル伝達経路を誘導する。重要な中間体の原子レベルの構造や脂質がシグナル伝達において果たす役割は、最近の研究の進展により明らかになってきている。しかし、野生型受容体が天然状態の膜を横切ってその下流のエフェクターへシグナルを伝達する事象をリアルタイムで捕捉することはまだ成功していない。今回我々は、典型的なクラスA GPCRであるロドプシンについて、天然の円盤膜断片中にある状態を、直接質量分析法を用いて調べた。我々は、暗順応したロドプシンがオプシンへと光変換される様子をリアルタイムで観察して、レチナールの異性化と加水分解過程を示すとともに、天然の膜中でのこの反応の速度が界面活性剤ミセル中よりも大幅に遅いことを明らかにした。ロドプシンとともに排出された脂質について考慮することで、光異性化したレチナールと脂質の抱合体を介してオプシンが膜中で再生されることが明らかになり、シグナル伝達中の不飽和長鎖ホスファチジルコリンとロドプシンの結合が増加することの証拠が得られた。シグナル伝達カスケードの2番目のステップを捉えることで、GDPの喪失を介してトランスデューシン(Gt)が光活性化されて中間体であるアポ三量体Gタンパク質が生じるのが観察され、Gαt•GTPサブユニットがPDE6と相互作用してサイクリックGMPを加水分解することが明らかになった。我々はまた、ロドプシンを標的とする化合物が、ロドプシン–オプシンとトランスデューシンのシグナル伝達経路を介してシグナル伝達を増幅、もしくは減衰させる仕組みを示す。今回の結果は、天然脂質がロドプシンのシグナル伝達と再生に及ぼす影響を明らかにするだけでなく、これにより天然の膜環境中でのGPCR薬発見の枠組みを考えることを可能にしている。

