医学研究:カルシウムで誘起される分泌の炭化水素ステープルペプチドによる阻害
Nature 603, 7903 doi: 10.1038/s41586-022-04543-1
Ca2+により誘起される膜融合は、保存されたタンパク質のセットによって統合されて、シナプスでの神経伝達物質放出やムチン分泌などの調節されたエキソサイトーシス過程を仲介する。神経伝達物質放出では、Ca2+感受性は、Ca2+センサーのシナプトタグミンとSNARE複合体間の相互作用により引き起こされ、この機構はムチン分泌でも保存されていることが、配列の保存と機能的研究から示唆されている。粘液の過剰分泌は、呼吸器ウイルス感染やぜんそく、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症の病態である気道閉塞の主な要因であり、Ca2+によって誘起される膜融合を薬剤によって阻害できれば、粘液過分泌の治療に役立つ可能性がある。今回我々は、神経細胞SNARE複合体とシナプトタグミン1のCa2+結合C2Bドメイン間の、いわゆる「最重要の界面」を損なうことでCa2+が誘起する膜融合を特異的に阻害する、炭化水素ステープルペプチドを設計した。これらの神経細胞シナプスタンパク質、または気道にあるこれらのホモログのシンタキシン3、SNAP-23、VAMP8、シナプトタグミン2をMunc13-2とMunc18-2と共に使って再構築した系では、ステープルペプチドは生理的Ca2+濃度で、Ca2+が誘起する融合を強く抑制した。細胞透過性ペプチドをステープルペプチドに連結することにより、ステープルペプチドは培養ヒト気道上皮細胞中やマウス気道上皮へ効率的に送達されるようになり、これら両方の系で、刺激されたムチン分泌を特異的に顕著に減らし、マウス気道の粘液性閉塞をかなり軽減した。まとめると、Ca2+によって誘起される膜融合を阻害するペプチドは、ムチン分泌経路を治療目的で調節できる可能性がある。

