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免疫学:ヒト腸内細菌はTH17を調節する胆汁酸代謝物を産生する
Nature 603, 7903 doi: 10.1038/s41586-022-04480-z
微生物相は、腸管免疫の恒常性を調節する。細菌は、インターロイキン17Aを発現するヘルパーT細胞(TH17細胞)などの宿主免疫細胞の発達や機能に影響を及ぼす。我々は以前、胆汁酸代謝物である3-オキソリトコール酸(3-oxoLCA)がTH17細胞の分化を阻害することを報告した。腸内常在細菌は3-oxoLCAを産生することが示唆されたが、そのような細菌のアイデンティティーは不明であり、3-oxoLCAや他の免疫調節性胆汁酸がヒトの炎症性病理に関連するかどうかは明らかではなかった。今回我々は、二次胆汁酸であるリトコール酸を3-oxoLCAや多量に存在する腸内代謝物であるイソリトコール酸(isoLCA)へ変換するヒト腸内細菌、およびその働きを担う酵素を特定した。isoLCAは3-oxoLCAと同様に、TH17細胞を促進する主要転写因子であるレチノイン酸受容体関連オーファン核内受容体γtを阻害することによって、TH17細胞の分化を抑制した。3-oxoLCAとisoLCAのレベル、そしてそれらの生合成に必要とされる3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子のレベルは、炎症性腸疾患の患者で顕著に減少していた。さらに、これらの胆汁酸のレベルはTH17細胞関連遺伝子の発現と逆相関した。まとめると我々のデータは、細菌により産生された胆汁酸はTH17細胞の機能を阻害し、この活性は炎症性腸疾患などの炎症性疾患の病態生理と関連する可能性があることを示唆している。

