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天文学:赤方偏移6.2に位置する大きく増光された星
Nature 603, 7903 doi: 10.1038/s41586-022-04449-y
銀河団は、強い重力レンズ効果によって背景にある天体を増光する。レンズ効果を受けた銀河の典型的な増光率は数倍であるが、数十倍あるいは数百倍に及ぶこともあり、これによって銀河は巨大な弧へと引き伸ばされる。個々の星がレンズ効果を生み出す銀河団と偶然に一直線に並ぶと、その増光率はさらに高くなる可能性がある。最近、赤方偏移がおよそ1〜1.5にある、重力マイクロレンズ効果によって一時的に数千倍に増光された星がいくつか発見されている。本論文では、さらに遠方で持続的に増光されている、ビッグバンの9億年後の、赤方偏移が6.2 ± 0.1の位置にある星を観測したことについて報告する。この星は、4種類の独立したレンズモデルによって推定されるように、前景にある銀河団レンズWHL0137–08(赤方偏移0.566)によって数千倍に増光されている。これまでのレンズ効果を受けた星とは異なり、この星の増光率と観測される光度(AB等級で27.2)は、3年半にわたる撮像と追跡観測でほぼ一定であった。レンズ効果を取り除いた紫外絶対等級は−10 ± 2であり、質量が太陽の50倍以上の星と一致する。この天体の確認とスペクトル分類は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による承認済みの観測で実施される予定である。

