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神経科学:ヒトの脳血管アトラスで明らかになったアルツハイマー病の多様なリスクメディエーター

Nature 603, 7903 doi: 10.1038/s41586-021-04369-3

ヒトの脳血管系は医学的に非常に重要である。その機能不全は身体障害や死亡の原因となり、脳血管系が形成する特殊構造である血液脳関門は、ほぼ全ての脳疾患治療の妨げとなる。しかしこれまでのところ、ヒト脳血管系の分子マップはない。今回我々は、VINE-seq(vessel isolation and nuclei extraction for sequencing)法を開発し、アルツハイマー病患者9人と認知機能障害のない8人に由来する海馬と皮質の計25試料から抽出した14万3793の単一核トランスクリプトームについて、ヒト脳の主要な血管細胞タイプと血管周囲細胞タイプをプロファイリングした。その結果、異なる脳領域や種で豊富に見られる遺伝子と経路が明らかになった。また、ヒト動静脈組織化の分子的基本性質が明らかになり、緩やかな内皮・断続的な血管壁細胞の連続体が再現された。さらに、ヒト周皮細胞に、溶質輸送と細胞外マトリックス(ECM)組織化により特徴付けられる2つのサブタイプが発見され、血管周囲繊維芽細胞と比較した髄膜繊維芽細胞の特殊化が明らかになった。アルツハイマー病では、ECMを維持する周皮細胞の選択的脆弱性と、血流の調節異常に関わる遺伝子発現パターンが観察された。脳細胞タイプをさらに広げて調べたところ、ゲノム規模関連解析(GWAS)によってアルツハイマー病リスクと関連付けられている上位45遺伝子中の30が、ヒトの脳血管系で発現していることが分かり、この結果は免疫染色により確認された。血管のGWAS遺伝子は、内皮タンパク質輸送経路、適応免疫経路、ECM経路にマッピングされた。多くはマウスではミクログリア特異的であることから、アルツハイマー病リスクの部分的な進化的移行が示唆される。我々の研究は、ヒト脳血管系の分子基盤を明らかにし、脳の健康・疾患・治療全般についての理解に役立つだろう。

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