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細胞生物学:非カノニカルなトリカルボン酸回路は細胞のアイデンティティーの基盤である
Nature 603, 7901 doi: 10.1038/s41586-022-04475-w
トリカルボン酸(TCA)回路は、細胞代謝の中心的なハブであり、栄養素を酸化して、エネルギー産生のための還元当量や、生合成反応のための重要な代謝物を生成している。TCA回路の生成物は細胞の生存能力や増殖に重要であるにもかかわらず、哺乳類細胞ではTCA回路の活性は多様である。この多様性が達成される仕組みや、多様性が細胞運命の確立に重要であるかどうかは、ほとんど分かっていない。今回我々は、細胞状態の変化に必要な、非カノニカルなTCA回路を特定した。遺伝的共必須性マッピングにより、カノニカルなTCA回路の代替となる生化学的な回路を構成できる遺伝子クラスターが明らかになった。この非カノニカルなTCA回路では、クエン酸がミトコンドリアから細胞質に送り出されて、ATPクエン酸リアーゼによって代謝され、最終的にミトコンドリアでオキサロ酢酸が再生成されて完了する。マウスの筋芽細胞や胚性幹細胞でATPクエン酸リアーゼあるいはカノニカルなTCA回路酵素であるアコニターゼ2の発現を操作したところ、TCA回路の構成の変化には細胞運命の移行が伴うことが明らかになった。胚性幹細胞は、多能性から脱出する際に、カノニカルなTCA回路代謝から非カノニカルなTCA回路代謝に切り替わる。従って、非カノニカルなTCA回路を阻害すると、細胞の多能性からの脱出が防がれた。これらの結果は、従来のTCA回路に状況依存的な代替回路があることを立証しており、細胞状態の変化には適切なTCA回路の関与が必要であることを明らかにしている。

