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原子物理学:超流動4He中の反陽子ヘリウム原子の高分解能レーザー共鳴測定

Nature 603, 7901 doi: 10.1038/s41586-022-04440-7

液体中に原子を導入すると、原子の電子遷移に由来する光学スペクトル線は、真空中に孤立した単一原子のものと比べて著しく幅が広がる。最も透明かつ低温で化学的に不活性な液体である超流動ヘリウムを媒質として用いた場合も、この線幅が100万倍以上に広がることが多く、それによって分光学的構造が不明瞭になり、高分解能での分光測定が妨げられる。今回我々は、反陽子を含む特異なヘリウム原子を超流動ヘリウム中に浸すと、可視光波長のスペクトル線がギガヘルツ以下の狭線幅を保つことを示す。この特異なヘリウム原子の周囲を取り巻く液体ヘリウムが超流動相に転移する際に、反陽子原子のレーザー共鳴線に急峻な線幅の先鋭化が観測された。この現象を利用することによって、普通の原子でできた高密度媒質に反陽子ヘリウムが内包されているにもかかわらず、反陽子原子中の電子と反陽子の間のスピン–スピン相互作用による超微細構造を、106分の2という高いスペクトル分解能で測定できた。レーザー遷移が起こっているさなかでも反陽子原子の電子殻の半径は、わずか約40 pmに保たれた。このように、反物質でできた原子核だけでなく、負電荷中間子やストレンジクォークで構成されたハイペロンなどを含む特異原子を、超流動ヘリウム中で生成し、レーザー分光法を用いてスペクトル線を高い分解能で測定すれば、そうした粒子の質量を決定できるはずである。この鋭いスペクトル線によって、液体ヘリウム中に静止する、宇宙線に含まれる反陽子の検出や反重陽子の探索が可能になるかもしれない。

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