Article

コロナウイルス:回復期血清とワクチン血清のSARS-CoV-2オミクロン株に対する活性

Nature 602, 7898 doi: 10.1038/s41586-022-04399-5

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン(B.1.1.529)変異株は、2021年11月に南アフリカとボツワナで初めて特定され、香港でも南アフリカからの旅行者から採取した検体中で見つかった。以降、オミクロン株は世界中で検出されるようになっている。オミクロン株は少なくともデルタ(B.1.617.2)株と同程度の感染力を持っていて、すでにスーパースプレッダー現象も引き起こしており、いくつかの国や大都市圏では、数週間でデルタ株と置き換わってきている。オミクロン株はスパイク遺伝子にこれまでにないほど多数の変異を持ち、初期の報告からは、幅広く免疫を回避し、ワクチンの効果が低下するという証拠が得られている。今回我々は、回復期患者、mRNAワクチン2回接種者、mRNAワクチン3回接種者、ワクチンを2回接種した回復期患者、ワクチン3回接種した回復期患者から得た血清について、SARS-CoV-2の野生株、ベータ(B.1.351)株、オミクロン株、それぞれのスパイクタンパク質に対するウイルス中和活性およびスパイクタンパク質結合活性を調べた。回復期患者とワクチン2回接種者由来の血清のオミクロン株に対するウイルス中和活性は、全く検出できないか、野生株に対する中和活性に比べて非常に低かったが、感染やワクチン接種を通してスパイクタンパク質に3回あるいは4回さらされた人では、血清のウイルス中和活性が、著しく低下はしていたものの維持されていた。ワクチン接種していない回復期患者では、オミクロン株のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインやN末端ドメインに対する血清の結合活性は、野生型に対する結合に比べて弱くなっていたが、ワクチン接種者ではほぼ維持されていた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度